標本について

カブト・クワガタムシは死んでしまったら終わりではありません。

天寿を全うした虫は捨てないで標本作りか土に置いてやって下さい。また、標本を作ってみたいという方のために標本の準備に必要なものや基本の作り方をまとめましたので参考にしてみてください。すぐに少し手間と時間はかかりますが、このページを読んで標本にしておけば大切に飼育した虫をずっと残しておけますよ。標本にしない場合はすぐに洗って、冷凍保存をしておきましょう。

準備するもの

標本箱

木製やプラスチック製など色々な材質のものがあります。
密閉性があるものがおすすめです。

昆虫針

直接針をさして昆虫を固定したり、触覚や脚を整えるのに使います。

乾燥剤・防虫剤

標本が虫に食べられないようにするために使用します。
食品を買ったときに入っている乾燥剤、タンスの防虫剤を入れてもよいです。

ピンセット

取れてしまった符節を接着剤でくっつけるときに使います。
細かい作業をするので先のスリムタイプで手になじむものを準備します。

接着剤

取れてしまった触覚や脚をくっつける時に使います。
乾いた後が透明になる木工用ボンドがおすすめです。

発泡スチロールやコルクボード

昆虫を固定する台として使います。できるだけ目が細かく硬めの材質のものが初心者には使いやすいです。虫の大きさに合わせてカットします。

標本ラベル

標本個体の名前や性別、サイズなどを記入しておきます。

標本の手順

昆虫標本を作る際の基本的な手順は以下の通りです。標本にする目的(研究、展示、学習など)によって多少変わりますが、一般的な流れを紹介します。

①昆虫を標本にするために、まずは死骸にする必要があります

甲虫類(コウチュウ類)の標本作成は、はねを広げる必要がない点で、チョウやガと比べてやや簡単ですが、保存状態の良さが標本の質を大きく左右します。すぐに標本にしない場合は、劣化を防ぐ為にきれいに洗って冷凍保存をしておいて下さい。

②標本に必要な用具を揃えます

《必要な道具》

◆展翅板(発泡スチロールやコルクボード)

◆昆虫針

◆ピンセット

◆ラベル用紙

◆標本を保管するもの(できれば密閉性の高い標本箱が望ましい)

◆防虫剤や乾燥剤

◆濡れティッシュ(軟化処理用)

◆接着用ボンド(脚が取れている場合)

 

③展足をします

昆虫標本を作る際に、昆虫の脚や触角、羽などを自然な形に広げて固定する作業のことです。乾燥した標本は水やお湯、蒸気でふやかしてから展足していきます。脚や触角などできるだけ自然な形に広げて固定します。元の乾燥状態に戻ろうとする為、展足が左右均等のままか経過途中で観察して下さい。脚が取れている場合はボンドで接着します。触覚なども左右揃うよう丁寧に確認してみて下さい。

 脚の整形 ⇒ 自然な歩行の形を意識して配置する(不自然にピンと伸ばさない)。脚が浮かないよう、細いピンで押さえて固定。関節部に針を当てると破損の原因になるので注意する。

前脚はやや前に開く。中脚は真横に近い形で広げる。後脚はやや後ろへ伸ばす。

触角の扱い ⇒ 両側に広げ、左右対称に整える(巻いてしまうと見栄えが悪い)

時間が経って関節が固まっている場合はタッパーや密閉容器に湿らせたティッシュの上に昆虫を置きます。カビ防止に少量の酢(またはエタノール)を入れるとよいです。1〜2日で脚や触角が動くようになるので、その後展足をします。

④ピン刺しをします

昆虫針を背中(前胸背板)の右側に刺すのが一般的とされています。

⑤乾燥させます

完全に乾燥するまで2〜3週間ほど放置します。夏場は短め、冬場は長めと季節によって乾燥期間は異なります。急速乾燥するとヒビや破損が起きることがあるので、自然乾燥が望ましいです。この乾燥が不十分だとカビの原因になります。乾燥中・保存中に脚などが取れやすいので、丁寧に扱います。完全に乾くまではピンは抜かないようにします。

⑥標本に昆虫針(虫ピン)を刺します

通常、胸部の中央を狙います。種類やサイズに応じてピンの位置や角度を調整します。

⑦ラベル作成

昆虫の種類、サイズ、採集地、採集日などを必要事項を記入します。専用のラベルか白い上質紙に小さく印刷し、ピンに通して標本の下に差し込みます。

⑧直射日光・高温多湿を避けて保管します

標本保管には乾燥、湿気、虫害に注意が必要です。長期にわたり状態良く保存するために、標本箱(防虫処理されたケース)に整理して保存するとよいでしょう。防虫剤(パラジクロロベンゼン、ナフタリンなど)も入れておきます。

標本用語集

■油抜き-体内に栄養が残っていると脂が出ます。標本をする前に死虫行う作業が油抜きです。

■展足-昆虫標本を作る際に、昆虫の脚や触角、羽などを自然な形に広げて固定する作業のことです。元々柔らかい状態で標本をしたものは変形が少ないのでおすすめです。標本は見栄えが命。展足の目的は昆虫が生きているときのような自然な形状を再現することです。美しく整えるためのとても重要な工程です。


標本の注意点

・展足の際に脚がもげやすいので、ピンセットは節の「外側」や「基部」を押さえるようにします。針で固めた状態できれいになっていても乾燥途中で左右が崩れる場合がありますので時々形を確認して修正を加えることが大切です。

・昆虫の胴体に指で針を刺すのは難しい為、ピンセットの腹で針を挟み、虫にゆっくりとさしていくとよいでしょう。虫と針のサイズが合っていないと針先が曲がることもあります。

・衛生・安全面にも注意し、換気の良い場所で作業しましょう。防虫剤の種類によっては毒性があったりします。


最後に・・・

標本で重要なのは左右対称であることです、したがって展足の仕方にどれが正解というのはありません。個人の好みによるところが大きいからです。

年に1〜2回は防虫剤の交換と中の状態チェックをして下さい。

絶滅危惧種や採集禁止区域での採集は禁止されています。事前に調べましょう。